男の料理が一皮むけるとき

男が作る料理の話です。

私個人のことで言えば、中火と弱火の使い方を覚えてから料理が格段に上手くなりました。

特にチャーハンなどは、強火一辺倒の業火主義でしたので、火に操られたマリオネット人形のように中華鍋を振り、盛大にコメをまき散らす恥知らずでした。

なんでずっと強火?

別れた妻は絶対にそう思っていたはずです。それが離婚の原因だったかもしれません。今さら気付いても遅いですが…

中華は強火が命。そう信じて疑わない男でした。そして、その強気の料理哲学は、はじめて家族に料理を振舞った記憶からはじまっています。

初めてカレーを作ったのは中学生のときです。

というのも、母が作るカレーはいつもシャバシャバした液体指数高め野菜固めじゃがいも大き目な、肉じゃがカレー風味に近いものだったからです。

「美味しいねー」と笑顔と愛情を振り撒く母に対して、何度か「もっと粘度の高いカレーを作ってくれ」とお願いしても、子供の戯言だと無視され続けていました。

そしてついに、テレビのCMでいつも見ている粘度の高いとろりとしたカレーを食べてみたい!という欲求が爆発したわけです。カレー反抗期。

もちろん市販のルーを使用したものでしたけど、家族には好評でした。

言うまでも無く、これ見よがしにドロドロで角が立つようなカレーを作りました。父は「どうやって作った?」と興奮気味に高評価を下し、姉はおかわりをし、母は複雑な表情で喜んでいました。

「俺の作る料理は美味しい」と確信した瞬間です。

厨房男子はこうして誕生しました。あの頃の思い出を胸に、躊躇うことなく自信を持って台所に立つ男に成長しました。

料理の鉄人でバルサミコソースを知り、チューボーですよ!でフランベを覚え、椎名誠のエッセイでキャンプ飯に目覚めました。

そう、どれも強火で料理することが多いんです。

俺の強火のルーツはここだったのか…

などと、早朝4時に目が覚めてふと思ったんです。

最近の私は、チャーハンを作るときも中火がメインです。調味料の準備を忘れていたときなどは、臨時で弱火にもします。だって、焦げ付くと臭いですからね。

強火信者だったときは、焦げを気にするよりもパラパラに仕上げることに命をかけていました。

お察しの通り、母の作るチャーハンはパラパラにはなっていませんでした。油炒め混ぜご飯のような様相で、冷や飯が固まりで残っている状態。でも、優しい美味さがある。

厨房男子のパラパラ信仰は、やはりおふくろの味に由来していました。どうでも良いことですが。

確かに、料理の鉄人と化して成功したときは、誰もが私の料理を褒めたたえてくれました。別れた妻も、もう一度作って欲しいと何度もお願いしてくれた記憶があります。

しかし、私がもう一度同じ味を生み出すことは、脱走した犬が戻ってくるような気まぐれの結果。それもこれも、30分で料理を仕上げるTVショーの悪影響だったことにしておきます。

強火で、勢いだけで料理する悲しい男だったよ。母さんゴメン

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